その日は晴天だった。



殺風景な部屋で、一人の少年は居た。


顔立ちが整った美しい、女性のような少年だった。

部屋の窓からは昇ったばかりの朝日の光がかすかに降り注いでいる。

彼はその部屋で、一枚の紙切れを見つめ、たたずんでいた。

それはずいぶん前の羊皮紙のようで、少しよれて変色が進んでいた。

そしてそこに書かれた英文はいっそう読みにくくなっている。


彼は少し考えて、やはりそれを捨てることにした。

左手でそれを握りつぶし、ゴミ箱へ落とした。

籠状の網目が入ったゴミ箱は、小さく音を立ててそれを他のゴミと同化させた。

彼は白いシャツにしたネクタイを締めなおし、トランクと鍵を手にした。

すると外から声がした。

「そろそろ行くぞ!」

少年は窓のほうへ返事をした。

「ああ、今行く!」

そしてカーテンを閉め、彼はドアに鍵をかけて部屋を出た。

部屋からいくつもの同じ部屋のドアを通り過ぎ、廊下を歩いていくと広間にでる。

もっと進むと入り口の隣の部屋の食堂に行き着く。

食堂には長い大きなテーブルがいくつもある。

少年は一番前のテーブルにそっと鍵を置いた。

孤児院の入り口まで出て、隣の大聖堂を振り返った。

鳴るはずのない鐘を見上げ、静かにため息をついた。

鐘は朝日に照らされて、白銀の光を放っている。

彼はゆっくりとそれに背を向け、歩き出した。


焼けるような太陽の光に抵抗を感じ、彼はサングラスをかけ、広いグラウンドを駆け抜けた。


門の前のさびれた歩道につくと、彼より少し年上の青年がワゴン車にもたれて待っていた。

彼はシュラのトランクを受け取り、助手席に乗るよう促した。

「ありがとう」

シュラはそう言って軽く微笑みを返した。

そして車に乗り込もうとドアに手をかけた瞬間、大きな音が体中に響いた。

早朝に鳴るはずのない大聖堂の鐘が堂々と鳴ったのだ。

大きな音を静かな下町に響かせて。

ただいつもと違い、そこの子供たちの元気な声はない。


なぜ・・・?