僕は映画研究部に所属している。


映画の鑑賞をしたり、時には映画を作ってみたりする。




まあ部員っていう部員は、10人くらいなんだけど。



「てかさ、また今度お前が書いたシナリオ見せてくれよ。」

「うん。いいよー。」


中野と仲が良くなったのも、たまたま中野が僕のシナリオノートを拾って読んでしまって、それを中野が気に入ったのがきっかけだった。

今でも中野は僕の作るシナリオを気に入ってくれてて、できあがった原稿を読んでもらうことがある。


「今度はどんなん?
ファンタジー?アクション?」

「……………純愛。」

「純愛?」


目の前の自分の指で切り取られた景色を見つめるながら、小さく答えた。

やっぱり中野は驚いたようにこっちを見ているのが視界の端に写って、恥ずかしくてそっちを見れない。

どうせこのあと笑われる。



しかし。


「まじ?すげー楽しみ!」

「は?」


予想外の中野の反応に、思わずそう聞き返す。

四角いままの手を下ろし、中野の顔を見上げた。


「いいじゃん、純愛。
へー、どんなのになるんだろうなー。」

「………はあ。」

「あ?なんでため息なんだよ。」

「いや、だって純愛とか馬鹿にされると思ってたからさ〜。
あー。まじ安心したよ。」

「そう?俺は純愛好きだからさ。」

「えぇ?!うそぉ?!」

「は?やめろよ、こっちが恥ずかしくなってきた。」


そう言って中野は頭をかいて立ち上がる。



「ほら、時間だからもう行こうぜ。」


少し顔を赤くした中野に少し笑って、僕も立ち上がった。







春はどうしても授業に集中できない。

ぽかぽかとして、世界が僕に寝ろと言っているようなものだ。



まだ僕は起きているけど、世界のそんな誘惑に勝てないものたちもいる。

教室を見回すと、数人は明らかに眠っていた。


まあ、今の授業が史上最強に心地好いしゃべり方をする歴史の村田先生というおじいさんなのがよくないのかもしれない。



眠っていないにしても、全員がうとうととしていて。


その中でもとくに豪快に眠っているのが、中野。

腕を組んで、前を向いたまま寝ている。


それに笑いそうになる顔を頬杖をついた手の平で口元をかくしてごまかし、外を見る。