「お、良い場所空いてんじゃん。」


良さそうな木の影があって、僕らはそこへ近づいた。

やっとの思いで座って、一息ついてパンを食べはじめる。


メロンパンの甘さが口の中に広がるのを感じながら、中野と馬鹿みたいな話で盛り上がる。



視界の端で、近くのベンチに座っている女子がそわそわしているのが見える。


目的は中野だ。


長身なうえに、まだ2年生なのにバスケ部のレギュラーとして活躍する中野は、3年や2年の女子だけではなく、入学したばかりの1年生や高等部の女子からも人気がある。


さらに。


そこで僕は中野の横顔を見る。


高い鼻に、くっきりした二重。



「……そりゃモテるよな〜。」

「ん?なんだよ。」

「なんでもー。中野様は人気者だなと思って。」

「まじ?わーい。」


棒読みでそう答える中野に僕は笑う。



中野の、飾らない態度が僕は気に入ってる。

髪も毎日どうしたらあの短髪がそうなるのかわからないくらい寝癖でぐちゃぐちゃで、ここだけの話、毎日の僕の楽しみだったりする。





「お!宮田じゃん!」


突然声を上げる中野に、僕も思わず中野が声をかけたほうへと顔を向ける。


するとそこに数人の女子が歩いていて、中野を見てそわそわする女子たちの中で一人、驚いたように中野を見つめる女子がいた。


その女子がしばらくぽかーんとしていたかと思うと、うれしそうに手を振る。



「ゆうちゃん!久しぶりだね!」

「ゆうちゃん?」



僕が思わずそうつぶやいて中野を見ると、少し恥ずかしそうに頭をかいて答える。


「俺の名前って中野優太だろ?
あいつさ、俺の幼稚園からの幼なじみでさ。
そのころからずっとゆうちゃんって呼んでんだよ。」


そこまで言ったところで、ミヤタとかいう女子が駆け足でこちらへ近づく。


「ゆうちゃんも外でごはん食べるんだ。
今まで会わなかったのにー。」


「今日だけだよ。
学食が混んでてさ〜。」


そう2人が会話すると、ミヤタさんが僕のほうを向く。



「三宅泪くんだよね?」

「え?ああ、うん。
なんで名前知ってんの?」


突然名前を呼ばれてうろたえる。


すると中野が声を上げて笑い、言う。