「で、お前のバスケはどうなの?
調子良い?」


ひとしきり笑ってそう聞くと、中野が力こぶを作るポーズを作る。


「当たり前〜。みんな良いやつばっかだし、楽しいよ。」

「高等部の先輩にけんか売ったんだろ?」

「人聞きが悪いっつーの。
遊びだよ、あーそーび。」

「ガチの?」

「もち。」

「子供か。」

「俺はたとえ鬼ごっこでもガチでやる大きな子供なの。」


自慢げにそう言う中野に、宮田さんが声を上げて笑う。

「確かにゆうちゃんは小学校のころから遊びでも本気だったからねー。」


中野の向こうから僕を見るように身体を乗り出す宮田さんに、中野がうなずきながらポカリスエットで宮田さんのおでこをコツンとたたく。


「だろぉ?
それとおんなじです。」

「はいはい。」


あまりに馬鹿らしい中野の理論にまた笑って、もう一度ポカリスエットをのむ。



「てかさ、お前はどうなの?テニス。」


中野がポカリスエットを宮田さんのおでこから離しながら聞くと、宮田さんはいつものようにうれしそうににっこり笑う。


「なかなか調子良いよ!
テニスは団体競技じゃないから、チームのの良し悪しはないんだけど……

やっぱり緊張する〜。」


身震いするような動きをする宮田さんを中野は肘でこずいて思いっきり飛ばす。

「きゃー。」
と言って横に倒れる宮田さんを見て笑い、中野が言う。


「なーにが緊張するー、だ。
お前がだれよりも緊張しねぇ鉄の心臓の持ち主ってことは俺が知ってんだよ。」

「そうなの?」


僕が思わず驚いてそう聞くと、中野がうなずき、宮田さんが起き上がりながら笑う。


「ばれたかー。
ま、緊張はしないんだけどさ。」


そこで宮田さんがまた覗き込むように僕の顔を見る。



「ね、三宅くん。
もし私がテニスのAブロックで優勝したらさ、次は三宅くんが私にポカリおごってよ。」

「えぇー?!」


僕が思わずそんな声をあげると、中野が楽しそうに笑う。

それを見て僕も意地になって、


「……いいよ。
じゃあ宮田さんも、宮田さんが見に来た僕の試合で僕が無失点だったらポカリおごってよ。」

「おぉ!でかく出たなー!」


中野がそう言ってからかってくるが、気にしない。

宮田さんはうれしそうにまた笑って、右手の小指を差し出してくる。


それを見て僕も小指を出し、指を絡める。



『約束ね。』


僕と宮田さんは、中野ごしに固く約束を交わした。