僕は球技大会の練習がはじまってから、近所の川辺で投球練習をしていた。


久しぶりに身体を動かしたせいでところどころ痛むし、慣れさせたい。

それにいま書いている青春のシナリオに、こういう野球の練習シーンを入れるのもいいかもしれないと思っていた。



堤防にボールを投げつづけていると、いつの間にか日も沈んでいく。


「あー、もう。
フォークってどうやるんだよ〜。」

そう言って空を仰いだところで、


「お、いたいた。」

そんな声が聞こえて、堤防の上へと視線を移す。


するとそこには、自転車にまたがって足をつき、片手を目の上に当てて遠くを見るようにした中野と、その自転車の後ろに乗った宮田さんがいた。


「がんばってんじゃーん。」

「三宅くん、お疲れー!」



2人は自転車から降りて堤防を駆け降りると、持っていたらしいポカリスエットをこっちへ投げてくれる。


「さんきゅー。」

そう言ってグローブを外し、汗をジャージでぬぐうとポカリスエットのキャップを開けた。



中野と宮田さんも同じようにポカリスエットを持っていて、川辺の整備された草原に座ると、飲みはじめる。


「なんで僕がここにいること知ってんの?」

思いっきり渇いたのどに流し込んでからそう聞くと、中野が携帯を取り出して開き、ディスプレイをこちらへ見せる。



そこにはなぜか、

『三宅かあちゃん』

と出ていて、見覚えのある携帯番号も出ていた。



「…………お前、なんで僕の母さんの番号知ってんの?」


その言葉に宮田さんがけらけら笑い、中野は当たり前のように携帯をしまってうなずく。


「こないだお前ん家行ったとき聞いた。」

「はあ?お前いつの間に………」

「ねぇねぇ、さっきさ、電話したあとに三宅くんのお母さんに会ったけどさ、すっごいかわいいお母さんだね。」

「は?しかも会ってきたの?」

「いや、そしたらお前の母ちゃんがお前は学校から帰ってきてから最近はいつもここだって言うからよー。」

「あのさ、話聞いてくんないかな、2人とも。」



それに中野と宮田さんが大声で笑う。


なんだか僕までおかしくなってきて、こっちまで大声で笑ってしまった。