次の日からほとんどの部活が活動を休止して、球技大会のチームで集まって練習をするようになった。


僕もジャージを着て、毎日放課後に吉田のスパルタ教育に付き合った。

吉田に借りた野球部の帽子をかぶり直しながら、右手のグローブで吉田からボールを受け取る。


ジャージの袖で汗をぬぐっていると、



「みーやけくーん!!!」


どこからかそんな声が聞こえて、探す。

するとグランドの隅で練習していたため、すぐ近くにある仕切り用のネットの向こうに、だれかが立っていた。


「宮田さん!」

吉田に待つように頼んで近寄ってみると、やっぱりそれはテニスのユニフォームを着た宮田さんだった。



「へー、様になってんね。」

ユニフォーム姿を見てそう言うと、宮田さんもわざとらしく胸を張っていばるような姿勢になる。


「ふふん。一応テニス部員ですから。」

「えぇ?!写真部じゃないの?」

「掛け持ちってやつ。」

「へー忙しいねー。」


感心していると、宮田さんもにこにこと微笑んで、

「三宅くんも立派な野球部だよ。」

と言うので笑ってごまかす。



「三宅ー、そろそろやるぞ 。」


後ろから吉田に呼ばれて、

「あ、じゃあそろそろ行くから。」

と宮田さんに言うと、宮田さんも微笑んで手を振って見送ってくれる。


「じゃ、またねー。」

「ん。ばいばい。」



走って吉田のもとへ戻ると、吉田が妙な顔をして待っていた。


「…………なんだよ。」

そう聞くと、ぼーっとしていたのか、吉田がはっとしたように顔をいつものように戻す。


「あ、いや、さっきの女子かわいいじゃん。だれ?」

「は?」


さっきの女子っていうと、宮田さんのことかな?


宮田さんって、かわいいのか……



「………ああ、さっきのは、Aクラスの宮田沙世っていう子。
中野の幼なじみなんだよ。」


そう言うと、なぜか吉田が悔しげに顔をしかめてじだんだを踏む。

「中野の?
あーくそ!イケメンには美女が寄っていくもんだよなー。」

「は?何言ってんの?
ほら、くだんないこと言ってないで練習しよー。」


グローブで吉田の頭を叩くと、僕は肩を回して準備をはじめた。