「ははは!これはもうシナリオ続かないな〜。」

「うそ?せっかく素敵なシナリオになるかもしれないのに、もったいないよー。」

「そうかな?まあ、いつか僕がだれかを好きになったときにでも書き足すよー。」


そう言って僕は『上書き保存』のボタンをクリックしてパソコンの電源を切ると、鞄を膝の上に乗せてごそごそとあさる。

その僕を見て宮田さんは焦ったように顔を上げる。


「あれ、帰っちゃうの?」


それに僕は顔を上げて、あせって顔を横に振る。


「え?あ、ううん、帰んないよ。
宮田さんは下校時刻までいるんでしょ?」

「うん。」

「じゃあ今日も送ってくからさ。
僕は新しいシナリオでも考えてるよ。」


そう言って僕はシャーペンとシナリオノートを取り出し、鞄をまた下に置いてノートをぺらぺらとめくる。

その僕を見て少し宮田さんが困ったような顔になる。


「でも……なんか悪いよ。」

「んー何が?」

顔を上げないままそう聞くと、その僕を見て宮田さんは少し笑う。


「わざわざ待っててもらって、迷惑じゃない?」

「そう思ってたらさっさと帰ってるよ。」


それに宮田さんはまた笑って、自分のパソコンに向き直る。


「ふふ、だよね。じゃあ甘えさせていただこう。」

「へりくだってんのか、偉ぶってんのかわかんない口調だな。」

「あははは。」





結局その日も、下校時刻まで宮田さんはプリントを作っていた。


チャイムが鳴り、パソコン室を出てカギを閉めると、



「あ、泪くん。」


後ろから静かな声が聞こえて、振り返る。

宮田さんもいっしょに振り向くと、

「おー、飯島さん。」

「なっちゃん!」

僕と宮田さんがそう言うのは同時だった。


それに思わず顔をしかめ宮田さんを見る。

「…………なっちゃん?」

「え?あ、飯島さんのことだよ。」

微笑んでそう宮田さんが言うと、飯島さんもうなずく。


「私は学級委員だから、執行委員のさよちゃんとはよく会議とかいっしょになるの。

だから仲が良くて……」