「一本!」


審判の声が、
静かになった格技場に響く。


監督を見ると、
驚いた顔をして真木を見ていた。


「監督?どうしたんですか?」


真木が不思議そうに聞く。


そんなん…


「当たり前や。」


うちはそう言って立ち上がった。


「今までうちに勝てる相手なんて、
いいひんかった。」


そうや…。


高校入ってからうちに勝てる相手なんて、どこにもいいひんかった。


ちっちゃい頃からずっと柔道やってて、
最近なんか負けることなんて
ほとんど無かったのに……。