考えれば入学式の時に外で本を読んでいた紗耶香は年上に決まっているのだが、何故か同学年だと尚人は思っていた。

『私の方が年上なの?じゃあ今日はおごってあげる』

その後、紗耶香に連れられて行った先はある雑居ビルの地下だった。

すれ違うのが困難なほど狭い階段を降りると、かなり年代物の分厚い扉がある。ここまで来ると暗くて周りがよく見えない。

『此処はよく来るの?』

少し不安になってきた尚人はかすれ声で尋ねた。

『たまにね』

相変わらずぶっきらぼうである。紗耶香がその扉を力一杯引っ張ると大きな音を立てて中の様子が伺えるようになった。

一見普通の喫茶店である。

流れるBGMは若干大きめではあるが、尚人の好きなジャンルだった。