『わたし帰る』

唐突に紗耶香が立ち上がる。慌てて尚人も席を立った。

『お、お茶でも飲みに行かない?』

自分で言ってから恥ずかしくなり顔を赤らめる。

我ながら何と使い古された陳腐な台詞だろうか。そんな尚人の心情を察してか紗耶香も思わず吹き出した。

『久しぶりに聞いたわ。彼女お茶でもどう?って』

『彼女とは言ってないよ』

照れ隠しにぶっきらぼうになる。

『いいわよ、付き合ったげる。私は三浦紗耶香。短大の方の2年生よ。あなたは?』

『北詰尚人…4大の1年』

その時初めて紗耶香の名前と、彼女が自分より年上だという事を知った尚人は、少し戸惑いながら自己紹介をした。