呆然としながら廊下に出た江里子は再び押し寄せる血の臭いに口を押さえた。

『どうだった?何か言われた?』

肩を抱くようにして雄一郎が囁く。

『うん…しばらく此処に滞在するようにって刑事さんが』

『そうか、まぁ直ぐに帰してくれるとは思わなかったけど、やっぱり駄目か…まぁ仕方がないね。江里子さんはずっと僕の側に居て下さい。僕が必ず守りますから』

和歌山から来たという大学生達が回りにいたので恥ずかしくて顔を赤らめる。

その瞬間江里子は猛烈な吐き気を催してホールを隔てた洗面所へと駆け込んだ。

危うく嘔吐物を撒き散らしそうになりながら何とか間に合う。

苦しい声を発しながら吐き続けていると、何時のまにか心配そうな顔をした雄一郎が傍に立ち江里子の背中をさすった。