私が話しかける勇気がなくてあんなことばかりをしているのを知っている彩乃は、いつも私にそう言ってくる。
確かに思春期の小中学生みたいなことをしている自分がなんだか馬鹿らしいとは思うが、できないものはできないのだ。
「どうしたもんかねー…。」
そう言って悩む彩乃に、私は苦笑いを浮かべた。
「なんかもう一生話せない気がして来たよ…。」
「馬鹿だなー愛理は。
話しかけるくらいできないの?」
「…うん。
だって話しかけて、あんた誰とか言われたら生きていけないもん…。」
まぁ、間違いなくそうなると思うけど。
「いやー…
さすがにそれはないでしょ。
同じクラスじゃん。」
「でも…。」
安藤啓介ならありえる。十分にありえる。
クラスメイトとかに全く興味なさそうだもん。
そんなことを話しながら、彩乃と共に教室を出た。
「市川さーん!」
校舎を出るとそんな声がグランドの方から飛んで来た。
「よっマドンナ!」
「愛理ちゃーんコッチ向いて〜」
そんな声に続いて聞こえてくる冷やかし。
はっきり言って私は地味だ。
校則が緩くて染色オッケーなのに、真っ黒な私の髪。
女子のほとんどが綺麗なブラウンヘアーのため、黒髪の私はかなり目立つ。
私だって、本当はみんなみたいに茶髪にしたい。
でも家が厳しくて、両親が許してくれるはずもなく…。
結局まだ一度も染めたことがない。
だからきっと男子たちは地味な私をからかってくるんだと思う。
「愛理は相変わらずモテモテだねー。」
なんて彩乃は呑気に言ってくるけど、そんなはずない。
モテてるんじゃなくて、馬鹿にされてるのに…。
彩乃は悪気がないから、しょうがないけど…ぶっちゃけ、嫌味を言われているようにしか思えない。
それに私はみんなみたいにお化粧映えしないから、アイシャドーとかラインができない。というか似合わない。
だから、それも地味さを強調させてるのかも…。
真っ黒な髪に、薄い化粧の質素な私と、
綺麗なハニーブラウンの髪に、綺麗に化粧された可愛い顔の彩乃。
なんだか凸凹コンビだ。
女の子らしい彩乃は私の憧れ。
可愛くて、明るくて、人懐っこい彼女はたくさんの人から好かれてるんだ。
コンプレックスだらけの私だけど、大学生になったら髪を染めて化粧ももっと研究して、大学デビューするって決めてるんだ。
彩乃みたいに可愛くなるんだ!
「愛理ー、男子呼んでるよ?
手くらい振ってあげれば?」
「絶対、いや。」
さっき冷やかして来たサッカー部員にキツイ視線を向け、彩乃にそう言い切った。
馬鹿にされてヘラヘラするなんて私には無理。
「彩乃が手振ってあげれば?その方がみんな喜ぶし。」
彩乃は凄くモテるから、きっとあの人達だって、私が手を降るより100倍は喜ぶと思う。
いや、1000倍か?
「はぁ…。相変わらず男嫌いだねー愛理は。」
彩乃は何故か、こんな態度をとる私を男嫌いだと思い込んでいる。