この手がいつか、離れてしまう前に。

 僕の淡いノゾミ。

 彼女。
 香桜を。




 僕の所為で、僕だけの世界に閉じ込めないで。



「香桜ちゃん、」
「ん?」



 彼女は振り返らず返事だけを返す。
 シャワー室まで、まだ。少し。



「大丈夫だから、授業いってて」



 僕はそっと、彼女の背を押した。


 初めての、僕からの拒絶。

 彼女にはそう、見えたかもしれない。