十一月のある日。
その日は文化祭一日目で、私はクラスのお化け屋敷の受付をしていた。
お化け屋敷だというのに、私はなぜか「不思議の国のアリス」の格好をして、教室の前に設置された受付の椅子に座らされている。
「ありすはここに座ってるだけでイイから」
猫娘に扮したクラスの女の子にそう言われ、私は気怠さを隠しきれない顔をして座った。
それから数時間経って、ようやくこの仕事から解放された事に喜んでいたら、私服の、多分私と同い年くらいの男の子三人が声を掛けてきた。
それはお化け屋敷に入りたいというものでも、道に迷ったというものでも無く、所謂ナンパっていうやつだった。
「ごめんなさい、私、あなた達みたいなガキに興味ないの」
なんて言えるはずもなく、私はただ黙って俯いていた。
痺れを切らせた男の子の一人が、私の腕を引いた。
「やめて下さいッ」
咄嗟に出たそんな叫びも、恐怖から呟きにしかならなかった。
私の抵抗が抵抗になっていない事を、男の子達は都合のイイ様に解釈したのか、私はそのまま引きずられていった。