教室内には、山崎先生と兎田先生が向かい合って立っていた。
私が入ると、二人は驚いた顔をして私を見詰める。
「あの、兎田先生は悪くないんです!私が勝手に付き纏ってただけなんです!だから、兎田先生を叱らないで下さい!」
そう叫ぶと、山崎先生は溜め息を吐いた。
「芹沢さんには関係のない話です。心配しないで、早く帰りなさい」
兎田先生はそう言って、私に優しく笑いかけた。
いつもと全然違う口調。
私の事、芹沢さんなんて呼んだ事無かったのに。
「もう話は終わったから。兎田先生も帰ってイイよ」
山崎先生は兎田先生の肩に手を乗せて、教室の戸の方に向かって来る。
そして戸と廊下の間に居る私と擦れ違った時、兎田先生を振り返った。
「君はイイ教師だから……注意してくれよ」
山崎先生は私にも「さようなら」と言って、廊下を歩いて行った。
数学準備室には、私と兎田先生の二人になった。
私は恐る恐る先生に近寄る。
先生、怒ってるかな。
私の所為で迷惑掛けて。
先生の立場とか考えてなかった。
「ごめんなさい……」
そう言った私は泣いていた。