初めは、母の得意な色気で父に迫ったらしい。


 しかし堅物の父には全く通用せず、むしろ父に軽蔑されてしまった。


“頭の悪い女は嫌いだ”と父に言われた事を受け、母は大きく路線を変更した。


 手始めに父と同じ『郷土研究会』に入り、同好会の活動をマジメにやり、更に必死になって受験勉強を始めた。また、それまで全く出来なかった料理も、多少は出来るようにした。


 気付けば、男遊びをピタッとやめたのはもちろん、それまで遊んでいた友達からは完全に孤立し、高橋さんが唯一の親友になっていた。


 そして高橋さんを知れば知るほど、容姿以外は彼女に敵わないと母は悟り、母は泣く泣く父を諦めた。


 その頃の母は、単なる意地ではなく、父が本当に好きになっていた。