「お母さん、手伝わなくてごめんね?」


 私は料理に勤しむ母の背中に声を掛けた。母はクルッと振り向き、


「いいのよ、今日はね」


 と言った。それは暗に、“次からは手伝いなさいよ”と言う意味だと思う。


「あたしがその分、お手伝いしてるもんね」


 母の横で手を動かしていた沙織が、私を振り向きそう言った。


「ありがとね」


 私はそう言ってから、沙織に手招きをした。


 “ん?”という顔をしてこっちに来た沙織に、

「さっきの事、誰にも言わないでよ?」

 と私は小声で言った。すると沙織は、


「なんの事?」

 と言うので、やっぱり気付かれてなかったのかな、と一瞬思ったのだけど……