「奈々」

屋上に行くと奈々はすでに着ていた。端の柵に手を添えて、空を見つめている。秋の空は少しずつオレンジ色に変わりつつある。

近づいて、もう一度奈々の名を呼ぶ。

二回目の呼びかけに振り向いた奈々の顔を見て、僕は足を止めた。

奈々は泣いていた。