「そうなんだ。幼稚園からなんて長い付き合いなんだね」

矢野が割って入ってきた。

「まあね。高野は暗い奴だから俺以外に友達いなくて」

泣き真似をしながら僕をからかう。
場がおどける。
僕も言ってやった。

「矢野はかわいい女の子には見境がないから佐倉さんも木を付けなよ」

僕のからかいに矢野は顔を赤らめて憤った。
首に腕を回してヘッドロックをしてくる。

でも僕にはそんなことよりも奈々が言った言葉があまりに気になった。

「奈々でいいよ、瞬くん」

男として勘違いせずにはいられない奈々の微笑みの前には、変わらず赤い数字が滲んでいた。