だけども、すぐに別の思いに心が大きく揺れた。

瞬時に悲しい思いが胸を走り、抉る。

自己紹介をと、少女が柔らかな声を出し、矢野の顔がさらに光悦する。

そんな矢野に顔を向けて、少女を横目に映した。

まともには見られなかった。

自分の目が怯えて震えているのが分かる。

それでも横目にしっかりと、見える。

逃れられない。


10.13


屈託のない笑顔を浮かべる少女には決して似つかわしくない、赤い数字が滲んで浮かんでいた。


少女の死を示す数字。


それは別れ日だった。