しばらく何も言わない。窓を叩く雨の音が妙に響いて聞こえた。

母は苦笑いを浮かべると、僕を指差した。

「その頭、鏡見たの?ぼさぼさよ」

そう言われ、髪に手をやる。確かに。寝癖がひどい感がある。

「直してきなさい」

面倒くさいが渋々席を立ち、洗面所に向かった。

その途中、視線を感じ振り返ったが、母はすでにまた僕に背を向けていた。