はー…恥ずかしい…


恥ずかしさのあまり俯いていると


「ぷっ、あははは」


と、元気な笑い声が落ちてきた。

「元気になったみたいですね。」

そういうと、朱里さんは目の前にマグカップを差し出した。

「ごめんなさい。うち、お茶がなくて。ブラックで大丈夫ですか?」

差し出されたマグカップからは、コーヒーの香りのする湯気が立ち上っていた。

「…すいません……」


僕は犬を解放してから、カップを受け取った。

受け取ったカップからは、インスタントではない、コーヒーの香りがする。


「か…香りのいい、コーヒーですね…」


僕は恥ずかしさと、落ちる沈黙が怖くて、小さな声で言った。


「…――突っ込みどころ、満載です…」


朱里さんはそう言うと、真剣な眼差しを僕に向ける。

黒目がちの大きな目が僕を撃ち抜く。

その目は、今まで出会った誰よりも強く、僕を貫いた。