「喧嘩売ってる?」

「わんっ!」


やっぱり売ってる!

よーし!勝手やろうじゃん!その喧嘩!



僕は犬に手を伸ばして捕まえようとする。

犬は犬で、ベッドの上の僕に飛びかかろうとしてる。

頭の中でゴングがなる。



人間対犬!


無制限一本勝負!




頭の中ではリングアナの実況が始まる。





おーっと!口を大きく開けています!犬の先制攻撃だ!

それに対して颯太は?

耳を掴んでいます!これは反則か?

おっ!違うようです!

犬も負けじと反撃しています!





「…――何…してるんですか?」




犬と取っ組み合いしている僕を、朱里さんが驚いた顔で見ていた。


そりゃ…驚くよね。

ついさっきまで土下座していたのが、犬と取っ組み合いなんて…


「はは……かっ、可愛いワンちゃんですねぇー…」


僕の笑いが虚しく響く。