慌てて体を起こすと、ベッドの上に土下座した。


「ごめんなさい!」


言いたいことは山ほどある。

朱里さんが可愛いこと。

本当は「キスしていい?」って言える性格じゃないこと。

倒れた僕を看病してくれたことへの感謝。

言いたいこと、言わなきゃいけないことはたくさんあるのに、言葉が出ない。



追い出されるかな?



普通、追い出すよね。

あんなこと言われたら……。

追い出されたら、会長との約束が守れなくなる。

朱里さんを守る。

会長との約束。

だけど、僕があんなこと言っちゃったから。


「おおおお茶入れてきます!」

バタバタと立ち上がる音が聞こえる。

朱里さん、かなり焦ってるみたい。

殺風景な部屋なのに、あちこちぶつかりながら移動してる。

そんな姿も可愛いんだけど♪


…そんな場合じゃなくて……


「もうダメかも…」

何て呟きながら顔をあげると、

「わんっ!」

と、再び犬の顔。

しかも、「やっちまったな」って顔で笑ってる。


こいつ、俺に喧嘩売ってるのか?

く…くやしい……

犬に笑われてる!

それがとてつもなく悔しい!


「何笑ってるんだよ?」

「わんっ!」


この犬、俺をバカにしてるー!