ヴィオレット 店内



「お待たせー。ヴィオレット特製ステーキ400gだよ…っと、どこに置こうか」

「ああ、隣のテーブルに置いてくれて構わないよ。あとは私がやるから」

「はーい」


アーネストに言われた通り、湊志は料理を手早くテーブルに置くと、店員に指示を出しながら足早に厨房へと消えて行く。
それもそのはずだ。
今日は休日。その上、正午を過ぎたばかりで、まさに稼ぎ時と言わんばかりの時間帯であり、店内は昼食を楽しむ客で賑わっていた。


「あかねっちはいないんスね」

「あかね嬢は急遽予定が入ってしまったらしくてね。早朝から出掛けて行ったよ」


そんな中、月に一度の会議の為に赴いたオルディネの面々。
彼等と共にアーネストと泰牙もまたヴィオレットへやって来たが、二人は会議に参加しない為、店内で待機することにしたが当然ながら満席であった。
だが偶然にも客の中に瀬々がおり、彼から相席を提案されたことで、何とか席に座ることが出来た。
とはいえ相席の対価として、アーネストは瀬々の食事代を奢ることになってしまったが。


「いやー!それにしても、ありがとうございやす!最近仕事続きであんぱんと牛乳以外ろくに食べてなくってー!本当に助かったッス!」

「君の上司は昔からそれが好きだからね。それにしても、藍猫はいつになっても人手が足りないんだね」

「そりゃあそうッスよ。何せ実績と社員の数が比例してないッスからね。社長はいつからあんな変な方針を出したんスかね?」

「初めからじゃないかな。私がいた頃には既にあったし」

「仕事中の食事はあんぱんと牛乳ってのも?」

「それは君の上司だけかな」


料理を口に運ぶ瀬々を眺めながら、他愛ない会話を交わす。
口に頬張る姿はまだ子供だが、情報屋としての彼には一目置くところがある。
故にあかねと同様、含んだ意味は違えど、アーネストは期待を寄せているのである。

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