大徳高校 廊下




「直江ちゃんってば、ちょっと俺らに雑用やらせ過ぎじゃね?」

「そうかしら。次の授業の準備だし仕方ないと思うわ」


言葉を交わしながら、見慣れた廊下を歩く昶と朔姫。
昼休みを過ごす場所として、利用している理科室に向かう途中、担任である直江に声を掛けられた二人。
一体何かと思えば、用件は次の授業で使うものを教室へと運んで欲しいという、ただの雑用だった。
朔姫は快く引き受けたが、一方の昶は終始、不満そうにしていた。


「だってよ…あかね達もう食べてるじゃん」

「……」


予想はしてたとはいえ、さも当然とばかりにいじける昶に、朔姫の無表情に近い顔には、呆れが混ざる。


「前から思っていたのだけれど、そんなにあかねの事が好きなの?」

「当然。だってオレ達、ダチだし。朔姫だってそうだろ?」

「あなたほどじゃないわ」

「え、そうなのか?」


驚きを隠さない昶に、今度こそ溜め息を零す朔姫。


「そうよ。あかねもよく嫌気を差さないでいられると、感心するくらい」

「そんなに?でもあかねは、そのままの昶でいいって言ってくれたぜ」

「…あかねも大概甘いのね。それとも」


それだけの大器なのか。
思わず口にしてしまいそうになるのを抑え、朔姫は指先で口元を覆った。


「んなことより、早く行こうぜ!」

「……」

「朔姫ー?」


反応が無かった事を不思議に思い、昶は振り返る。


「…ねぇ」

「ん?」

「昶はあかねにリーデルになって欲しい?」

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