しかしそれでも、引き受けた当初は、ただの重荷でしかなかった。
自分には一体何が出来るのか。
それすら分からなかった。
それから時が経ち、今ではただ純粋に、目の前にいる大切な人達の為に、リーデルになりたい。
そう思えるほどに、あかねはリーデル候補としての自覚を持つようになっていた。


「いやぁ…流石ッスわ」


瀬々は心底満足げに笑う。


「唐突にやってきた災難に、立ち向かいつつも受け入れて、悔いなき選択と結果を求め模索する。やっぱ、あかねっちは凄いッスね」


流暢に羅列する言葉を並べ、瀬々は麺をすする。


「まぁ満場一致はともかく、あかねっちはリーデルになれるッスよ。てか俺がメンバーなら、絶対なって欲しいッスわ」

「ふふっ。ありがとう」

「冗談だと思ってやすね?でも本当ッスよ。だって他人の為に一生懸命になるなんて、俺には絶対出来ないことだもん」


口に麺を含んだまま、言い放った瀬々は、そのまま最後にスープを流し込む。
あっという間に空になったカップ麺。
食べるのが早いと思いながら、あかねは変わらずに弁当のおかずを口に運ぶ。


「なんだか意味深な言い方ね。私はそんなにお人好しじゃないけど」

「いーや。かなりのお人好しッスよ、あかねっちは。でなきゃリーデルの件も引き受けないし、ましてや俺みたいなのと友達になるわけがない」


自嘲気味の瀬々に、あかねは怪訝な表情で不快感を露わにする。


「リーデルの事は分かるけど、友達に関しては意味不明だわ。確かにアンタは、顔や頭が言い分、ウザいし胡散臭いし、性格悪いけど」

「…思いのほかズバッと言いやすね」

「事実でしょ。でも私、嫌いじゃないよ。瀬々のそういうとこ」


平然と答えたあかねだったが、瀬々は意外だったのか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。


「ホントに?」

「本当に。だからそういう気持ち悪いこと、言わないでよね。らしくないから」

「あかねっち…!」


何を思ったのか、瀬々は顔を綻ばせ目を輝かせる。


「これはあれッスね!?持つべき者は友!!あかねっち好きッス!抱いて!」

「だが断る」

「あーん!いけずー」


それでもなお、抱き付こうとする瀬々を適当にあしらいながら、あかねは弁当を食べ続けた。


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