「ちょっ…それヤバいッス」


肩を震わせていた瀬々だが、耐えきれなくなったのかついには笑い転げた。


「〜〜っ〜〜っ!」

「大丈夫?」

「だ、だ大丈夫ッス。プフッ…あー葉風っちヤベー」


腹を抱えながら笑い転げた瀬々は、自身を落ち着かせようと、ペットボトルを取る。
お茶を流し込むと、ゆっくり息を吐いた。


「ふぅ……話が逸れちゃいやしたけど、リーデルの方はどうスか?」

「そっちも似たようなもんだよ。日数的にやっぱり厳しい」

「と言うと?」

「とりあえず三人は見つかった。で四人目は、まだ断定は出来ないけど希望はある。でも」

「五人目が見つかってない」

「……うん」


あかねが無事、オルディネに戻ってから既に三日も経っていた。
正確に言えば、オルディネの命運が決まるまであと、一週間だった。
だが実際、あかねが集められたのは三人だけであり、目標には届いていない。


「アーネストさんと話して、五人は集める予定だったけど、それは厳しいかも知れない」

「でも反対派の人達が、一人でも賛成してくれれば、過半数ッスよね?それなら――」

「それじゃあ駄目なの」


瀬々の言葉を遮り、あかねははっきりと答えた。


「一人でも不満を抱えたままだと、なんて言うか……今は良くても先々不安っていうか。みんなに認められて、リーデルにならないとって思うんだ」

「……」

「満場一致なんて、そんなの贅沢だって分かってる。でも、私はそうなりたい」


リーデルになって、再びオルディネに栄華を。
そんな大それた事を、あかねは思ったことなどなく、ましてや一度たりとも、考えたことすらなかった。
そもそもリーデル候補となったのは、ジョエルに仕組まれ嵌められたことが発端であり、また彼の言葉に乗せられた自分に、非があることも理解していた。


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