大徳高校 第三理科室
「とりあえず、お疲れ様っした。はい、これ」
「どーも」
瀬々が手渡してきた牛乳パックを手に取りながら、あかねは向かい合わせに座った。
「昶と朔姫は?」
「途中まで一緒に来てたんスけど、直江ちゃんに呼ばれちゃって。後から来るッスよ」
「そっか」
「体の方はどうッスか?」
「大丈夫だと思う。館に戻って丸二日間、寝っぱなしだったしね。結祈曰く、異能を使い過ぎたみたい」
「確かにあかねっちは、異能はまだ使いこなせてないッスもんね」
瀬々の言葉にあかねは頷く。
「傷はまだ少し残ってるけど、その内消えるって言ってたし」
「そうッスか。なら安心しやした」
少し安心したように笑う瀬々を横目に、あかねは弁当に手をつける。
久々に食べただし巻き卵に、何ら変わりない日常に戻ってきたと改めて実感し、ほんの少し、嬉しさが込み上げた。
「そういえば、いよいよッスね」
「ん?」
「リーデルの件と中間考査」
「……あー」
現実を突き付ける瀬々。
あかねは途端にうなだれて、声を漏らした。
「正直、今は忘れていたかった」
「んな事言ってー。中間ならあかねっちの頭で、なんとかなるっしょ」
「日数的に無理だわ。だから汁子と信乃に、山張りお願いする」
「じゃあ俺も……って信乃っちは分かりやすけど、しるこって誰スか?」
「慎太郎」
「あ、葉風っちね!ちなみにあだ名の由来を聞いても?」
瀬々は尋ねながら、三分経ったカップ麺の蓋を外す。
あかねは変わらず、おかずを口に運んでいる。
「んー…この前の自習の時に信乃と、慎太郎ってお昼いつも味噌汁だよねって話になって」
「へぇ」
「気になって本人に聞いたら、味噌汁は千代の友とか訳分かんないこと言い出してさ」
「ブッ!」
「それで信乃と、慎太郎は味噌汁大好きっ子なんだねって結論出て。略して汁子になった」
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