「お姉ちゃ―」
「支度出来たか?」
言いかけてた時に、不意に声を掛けられドアが開く。
すると楓は驚いた表情をした後、すぐに頬を膨らまし現れた兄の前に立った。
「ちょっとお兄ちゃん!ノックぐらいしてから入ってよ!」
「何?」
棗は眉を顰める。
「お姉ちゃんが着替え中だったらどうするのよ!」
「そんなはずねぇだろ。あれから五分は経ってんだから」
「それでも!もしかしたらって事を考えて!いくらお兄ちゃんでもデリカシー無さ過ぎ!そんなんじゃ次期当主もやってけないわね!」
「なっ……!?」
楓の言葉に思わず怯む兄を見て、あかねは腹を抱えて笑った。
それが気に障ったのか、棗は更に不機嫌な顔つきになる。
「あかね!支度出来たならさっさと行くぞ!」
居辛くなったのか、八つ当たりするかのように怒鳴って部屋を出る。
「いってらっしゃい!お姉ちゃん」
「いってきまーす」
荷物を持つと、ドスドスと音を立てながら歩いていく棗の後について行こうと部屋を出て、ふと振り返る。
「楓」
「ん?」
「さっきの話は、私達だけの秘密ね」
「うん!私達だけの秘密ね!」
笑顔で頷く楓に、あかねも笑って部屋を後にした。
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