「…そんなことないよ」


あかねは一息吐いて、首を横に振る。


「あたしも全部納得してるわけじゃないけど、家族が増えるって聞いたら何だか楽しみで」

「楓はもう一人お姉ちゃん欲しいって言ってたもんね」

「うん。でも葵お兄ちゃんは猛反対してるし、お姉ちゃんや蓮お兄ちゃんは微妙な感じだから、喜んじゃダメなのかなって」

「そんな事ないよ。蓮兄は何も言ってないし、私も歓迎はしてる。それに楓が嬉しかったら、それでいいんだから。その方が新しいお姉ちゃんも安心するだろうし……ね?」


その言葉に楓は嬉しそうに笑顔になるが、何を思ったのか一瞬にして不安そうな表情になる。


「……歓迎してるのに家から出て行くの?」


核心を突くかのような問いに、少し眉を下げて一息ついて頷く。


「…そうだね」

「どうして?」

「言ったでしょ。寮生活したいって」

.