「着替えるから、兄貴は出てって」

「早くしろよ」

「はいよ」


棗が溜め息を零しながら部屋から出て行き、扉が閉まる音を確認すると、あかねは寝間着を脱いで着替え始めた。


「あたしも何か手伝おっか?」

「大丈夫。ありがとう」


手に取った高校の制服はセーラー服で、柄や色は違えど中学からセーラー服のあかねにしてみれば、馴染みやすく着替えやすいものだった。


「お姉ちゃんも、もう高校生かぁ」

「そうだね」

「いいなぁ。あたしも早くなりたい」

「楓ももう小6だし、もうすぐだよ」

「あと四年もあるよ……いいなぁ。私もお姉ちゃんみたいに一人暮らししたい」


不満を含んだその声色に、あかねは不思議そうに楓を見る。


「寮生活ね。楓は家を出たいの?」

「うん」

「どうして?この家が嫌い?」

「嫌いってワケじゃないけど……なんとなく嫌っていうか……その」


口ごもる妹に思わず笑みを零し、スカートを履いてハンガーに掛けてあったピンク色のスカーフを取る。


「私は好きだけどな」

「と、とにかく出たいの!お母さんの言いなりとかになりたくないし!」

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