旅館を出て、来た道を戻っていく途中。
不意にあかねは、昶を見上げると思わず目が合い、互いに笑い合う。

昶と過ごしていた何気ない日常が帰ってきたようで、あかねは心なしか嬉しかった。
だからこそ。
伝えておこうと思ったのだろう。


「ねぇ昶」

「ん?」

「この際だから、はっきり言っておくけど……中傷を受けて不信になるのも分かる。でも私はあなたを裏切らない。例え昶が私から離れたとしても。それだけは覚えておいてね」


あかねが微笑みながらそう告げれば、昶は驚いたように目を見開き、今度は嬉しそうに笑った。


「っ………ああ!やっぱあかねは最高のダチだ!」

「もちろん!」


互いの想いを確かめ合えば、自然と足取りは軽くなる。
ふと見上げれば、空は先程より少し色濃く茜色に染まっていた。
そして自分の心もまた穏やかに、されど色濃く染まっていることをあかねは密やかに感じていた。


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