黎明館 二階 自室
黎明館の朝は、静寂に包まれている。
陽が昇りきっていない、やや薄暗い一室。
その部屋の主である、朔姫は目を覚ます。
時計を見れば五時半と、目覚ましが鳴る時刻より一時間も早く起きてしまっていた。
二度寝をしようとも思ったが、それには些か半端な時間な為、やや重い体を起こす。
掛けてある制服を手に持ち着替え、部屋を一通り綺麗にすると、朔姫は部屋のドアを開けた。
廊下を歩けば春とはいえ、少し肌寒く感じる。
朔姫の場合、体質によるものかも知れないが。
「おはようございます。今日はいつもより早いですね」
誰もいないであろうと思っていた食堂のドアを開ければ、そこには柔和な笑みで、自分を迎える結祈の姿があった。
「おはよう。あなたも早いのね」
驚きながらそう言えば、結祈は苦笑する。
「本が無いとジョエルに叩き起こされまして。今まで探してたら、起床時間と大して変わらなくなってしまい、早めに朝食の支度をと」
「それは……お気の毒に」
毎度の事ながら、彼を見てそう思う。
確かにジョエルは人使いが荒い。
だが自分達にはそれは許容範囲だけの事なので、特段気にするような事でもなかった。
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