一瞬耳を疑う。
限られた者。思わずジョエルを見るが、答える気はないようで、意図は全く読めない。

――既に限られてる気がするんだけど……。
――もしかしてこういうこと?

あかねは自分なりに意図を解釈し、口を開いた。


「結祈」

「何でしょうか?」


不意を突くように呼ぶが、結祈はすかさず応える。


「少し喉が渇いちゃって。ジョエルの話はまだ長そうだから、何か飲みたいんだけど」


申し訳なさそうに言えば、結祈は納得したように笑顔を零した。


「分かりました。冷たいものがいいでしょうか?それとも温かいものに致しましょうか」

「温かいのがいいな。出来たら甘いの」

「それならミルクティーをご用意しましょう」

「では私はコーヒーだ」


便乗するジョエルに、結祈はあからさまに嫌そうな顔をする。


「貴方には聞いてないのですが……アーネストさんは?」

「あかね嬢と同じので」

「分かりました。それでは失礼します」


結祈は一礼して静かに部屋を出る。
扉が閉まり足音が完全に聞こえなくなったのを合図に、あかねはジョエルに向き直った。



「これでいいの?」

「ああ。見かけによらず聡いようで安心したよ。だが念には念をだ……アーネスト」

「分かってるよ」


ジョエルが目配せをすると、アーネストは微笑む。


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