ジョエルは結祈とアーネストを指す。
二人は会ってから変わらず、親切に接してくれている。
だがそれは手懐けているわけではなく、あかねは更に疑問が増える。


「よくわからないけど……それならジョエルがやればいいんじゃないの?見かけによらず、凄い人だって聞いた」

「見かけによらず、ね。確かに私でも務まるには務まるだろう。だが性に合ってないのでね。長続きしないさ」


個人的な理由に、随分と勝手な人だとあかねは思う。


「アーネスト辺りに聞いたとは思うが、リーデルとは象徴だ。故にそのチームで、最も優れている者がなるべきであると言うのが自然の流れでもある」

「じゃあどうして?何でジョエルは私をリーデルにしたいの?」


それが一番の疑問だった。
ジョエルは自分を知っていると言った。
だがあかねはどうしても彼を思い出すことは出来ない。
その時点でも一方通行なのに、そこまで自分を推す彼を不思議に思い、余計に気になっていた。


「資質があるのもそうだが、純粋に君がいいと思ったからだ。私は誰かの下につくのは好きではない。だがお嬢さんなら、それも悪くはないと思ったまでだ」

「どうしてそこまで……」

「さぁ……何故だろうな」


曖昧な言葉を並べて、ジョエルは笑みを浮かべる。だがあかねには、その笑みはどこか困ったように映っていた。
てっきり皮肉の一つや二つを言われるのではないかと思っていたせいか、その表情に驚き目が離せなかった。


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