三階 ジョエル自室
「お嬢さんは、私に休息すら与えたりはしないと。年頃の娘とはこうも強引なものなのか」
自室のドアを勢いよく開けたのと同じく、ジョエルの部屋のドアを開ければ、待っていたと言わんばかりに皮肉な物言いで迎えられる。
「仕方ないでしょ。あなたから聞きたい事がいっぱいあるの」
「必ず説明すると言ったはずだが?結祈にも言伝をしておいたはずだ」
ジュエルはそう言い放って、後ろにいるであろう結祈に視線を向ける。
少しだけ振り返れば結祈は気まずそうに、視線を逸らしていた。
まるで彼だけが責められているような気がして、あかねは歩み寄って至近距離で彼を見上げた。
「結祈はちゃんと言ったよ。でも私は待ってなんかいられないから。それにこっちから来てあげたんだから、手間は省けたでしょ」
「クックッ……確かにな」
挑発的な笑みと共に、ジョエルは喉を鳴らす。
「食堂での態度と変わって、随分と積極的なお嬢さんだ。私に騙された事を、忘れてはいないだろうに」
「もちろん。あなたが変わらず変質者だって事も……でも」
「でも?」
ジョエルは言葉を待つ。
「あなたのしている事は、全てオルディネの為なんでしょ」
.