あかねは今一番気になる人物の名前を口にする。
「彼も自室にいます。後で部屋へ伺うと仰ってました」
「よし」
何かを決意したように、そのままドアに向かって歩き勢いよく開ける。
「あかね?」
「今行く」
「え!?」
「待ってる時間があるなら、善は急げって話よ」
待って得るよりは自分から進んで得た方がいい。
あかねの信条の一つだ。
だが後ろにいる結祈は驚いたのか、あかねの肩を掴み引き止めている。
「心配しなくても大丈夫です!ジョエルは必ず来ますから!」
「でも彼は約束破りの常習犯なんでしょ」
「そ、そうですが!今回の場合は大丈夫かと」
「……そんなに反対するなら、結祈も行けばいいんじゃないかな?」
結祈と押し問答を繰り返していると、見かねたアーネストが助け舟を出すように口を挟んだ。
「アーネストさんナイス!」
「私は可愛いあかね嬢の味方だからね」
「またそうやって………ああ!あかね!お待ち下さい!」
話している間に肩から手を離してしまったのだろう。
既にあかねの姿はなく、結祈は慌てて部屋から駆け出して追いかける。
「やれやれ。あの様子では些か心配、かな」
喧騒が過ぎた部屋で、アーネストは呟きながら部屋を出るのだった。
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