訊き返せばアーネストは無言で頷く。
「それと同時に実力主義の異能者社会では、リーデルをチームの象徴と捉える事も少なくない」
「象徴?どういう事ですか?」
「要はリーデルによって、そのチームの品格や教養などが分かってしまうという事だよ」
その答えにあかねは絶句する。
あの男はそんな大役を、自分に押し付けようとしていたのか。
先程の陸人達の反応が、ようやく理解出来た。
ただでさえ窮地に立たされているチームの命運を握るのが、今日会ったばかりの何も知らない小娘では、誰だって抗議はするだろうし、そもそも納得するはずがない。
「そんな……いきなり言われても……」
意味を知った第一声がそれだった。
「私、確かに異能者ですけど、リーデルなんて出来ないです」
恐らく自分自身が否定するよりも、周囲が否定するだろう。
「でも君は署名をしてしまっただろう」
「しましたけど、あれはオルディネに所属する為の誓約書だってジョエルが……!」
それしか言ってなかった。
だがジョエルは初めから自身をリーデルにさせるつもりで、誓約書に署名をさせたのだろう。
そうでなければ、わざわざリーデル専用の誓約書を用意し、そこに書かれている事項を読んで聞かせたりなど手間を掛けたりしない。
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