恋人に去られた、心身ともにぼろぼろだった美香さんを支えてきた司の苦しい時間は決して短いものじゃなかったはずで。

美香さんに対して、恋愛感情よりも同情にも似た感情の方が勝っていたと教えてくれたけれど。

今私に向けてくれた心配そうな顔は、何度も美香さんにも向けられた表情と同じはずで、そのことがどうしても気になってしまう。

気にしてしまう自分に気づいた途端に落ち込んで苦しくて。

司が私一人のものではないし、この先も、そんな日が来ないんじゃないかという思いが体に溢れて切ない。

美香さんの存在が司の後ろに見え隠れする時間を、私はどれだけ我慢すればいいのかと、体に鉛が入れられたみたいに心は重くなっていく。

これまで私が司に対して抱えてきた『好き』だという強い思いをそのまま素直に浄化させて、司のもとに飛び込めない。

そう、好きだという気持ち以上に、やっぱり司と美香さんとの関係に、不安が募るから。

素直に気持ちをぶつけられない。

だから、コンパで知り合った弁護士さんとのつながりを深めたいと、素直に、そして強気で笑う貴和子がまぶしく見える。

そんな貴和子に優しい笑顔を向ける海を見れば、初恋以上の気持ちで仲良くしていた頃の私達を思い出して、あの頃の単純な毎日が懐かしくなった。

海を通して思い出す、甘くて切ないだけの、単純な想いだけで日々過ぎていたあの頃とは、今はもう違うと実感した。