そんな貴和子をしばらく見ていた海は、肩で小さく笑うと。

「ま、考えておくよ。とりあえず、お前らが二人で会ってからだな。
俺は人の恋路をどうこうするつもりはないから、しばらくは静観。
何かあれば真珠にでも言ってくれ。話は聞くから」

貴和子に優しくそう言った。

私以外に向けられた海のそんな穏やかな視線を目の当たりにして、高校時代の青い切なさ溢れる頃の気持ちを思い出した。

付き合っているわけではなかったのに、私は海の特別だと思ってしまっていたから、海が他の女の子と仲良くしているだけで苦しかった頃の気持ち。

高校生特有の青い気持ち。

今、貴和子に優しい言葉をかける様子を見るだけで、当時の甘酸っぱい気持ちがよみがえってくる。

そんな気持ち、忘れていたのに。

「真珠?どうした?」

「え?」

いつの間にか俯いていた私を気遣う司の声に、はっと顔を上げた。

怪訝そうに、そして私を心配するような表情。

「あ、ごめん、なんでもないよ。……貴和子の恋がうまくいけばいいなって思ってただけで、大丈夫」

はははっと軽く笑って見せると、司はそっか、と小さく呟いた。

私を心配してくれるような表情を見せられて、私の気持ちはちくりと痛んだ。

きっと、司は今までにもずっと、美香さんという彼女に対して同じ顔を向けていたんだろうと、想像してしまう。