まるで牽制するかのような、司からの視線を向けられた海は、一瞬眉を寄せて驚いていたけれど、次第ににやりとした笑いを浮かべた。

時々見る、その油断できない表情からは、海が何かを企んでいるとすぐにわかって。

見た目がいいだけに、性格もまっすぐで爽やか、実直でいい人だと思われがちな海だけど、その本性はまるで違う。

「う、海……?」

何を言い出すんだろうと慌てて海に声をかけたけれど、海は私の声に反応する事もなく。

「真珠に一番近い男になりたいのなら、自分の周りを完全に綺麗なものにしてから来い。長い間気にかけてきた女がいるのなら、その女との関係をはっきりさせてからにしろ。じゃないと、俺は親戚だという権限で真珠をお前に渡さない」

「う、海っ」

焦って間に入るけれど、海は肩を竦めて息を吐いた。

「真珠とは長い付き合いなんだ。恋人じゃないけど、俺には大切な女だ。
安心して任せられる男にしか渡すつもりはない」

これ以上何を言われても聞く気はないとでもいうように、海は言葉を落とした。

司に対して宣戦布告とでもいうか、身内である私への親愛の情が行きすぎというか。

どこか私をかいかぶりすぎなんだけど。

深い優しさで揺れている瞳を私に向けられて、私は海に何も言えなくなった。

私の事を本当に心配してくれていると、そうわかるから、たとえ今、司が傷ついていたとしても、海の言葉を非難する事なんてできない。

「俺は、真珠が幸せならそれでいいんだ」

高校の時から何度となく言われてきた言葉が、切なく私の心に響いた。