「道連れって?」

「ん?あのね、……」

貴和子が苦笑しながら話し始めた途端、司が貴和子の腕を軽く引っ張った。

「余計な事を言うなよ。それに、貴和子だって海さんに用事があるからっていそいそとついてきただろう」

拗ねたような司の声に、私の向かいでにやにやと笑っていた海がぴくっと動いた。

「え?俺?」

突然出てきた自分の名前に反応した海は、怪訝そうな視線を貴和子に向けた。

そして、一瞬何かを考えた後、思いついたようにくすりと笑った。

そして、何かをたくらんでいるような目で

「弁護士夫人を目指すなら、かなりの競争率だぞ」

もったいぶった声音でそう告げた。

弁護士夫人……?

一体何の話だろう。

海と貴和子を交互に見遣りながら、それぞれの言葉を待ってみるけれど、二人とも視線だけで分かり合っているのか苦笑を浮かべて頷くだけ。

「海、どういう事?競争率ってなんの話?」

「ん?だから言ったろ?せっかく極上のオトコを用意したんだからコンパに来れば良かったのにって」

「コンパ……?」

「そう、真珠がドタキャンした先週のコンパだ。……だろ?」

最後の言葉と視線は、私たちの座るテーブルの横に立ったままの貴和子に向けられた。普段私には見せない男っぽい表情で言葉を投げる海に、少し戸惑って。

ああ、私以外の女の子には、こんな顔もするんだと、艶っぽく目を細めた海をぼんやりと見つめてしまった。