ここ数日時間を割いて作った今日のための資料をファイルに入れてほっと一息。

新入社員研修とはいえ、各部署の生の声を聞かせろという研修部からのお達しに、毎年各部は辟易している。


今年はたまたま、お行儀の良い、聞く耳と態度を持った、『やりやすい』新入社員ばかりだったけれど、毎年そうではないのはよくわかっているから。

来年からは、勘弁してほしい。

つきたくもないため息をついて、席に戻る前に買ってきたコーヒーをぐっと飲んだ。

椅子に体を預けたまま、パソコンを立ち上げている間に。

私が席を空けていた間に届いていた、いくつかのメッセージを整理していると。

業務に関係するものばかりだけど、その中に、ピンクのハート型の付箋が混じっていて目を引いた。

さっと手に取ると。

付箋の派手目の色合いには似合わない、かなり綺麗でお手本のような文字。

「貴和子だ」

見覚えのある文字にくすっと笑って文字をたどると。

『海くん、想像よりも格好よくて驚いた。真珠が欠席で機嫌悪かったけど、それも魅力的で。でも私は弁護士にロックオン。よろしく』

はあ、なんだか。

仕事中とは思えない、慣れない疲れが体を覆ったような気がした。

貴和子がロックオンなんて、滅多にないから相当気に入ったんだろうけど、私を介するのはご遠慮願いたい。

直接連絡先聞いてないのかな。

よろしくって、書かれた文字を見ながら、更に大きなため息が出るのを我慢できなかった。