その声を気にすることなく、都築君は私に視線を集中させて。

「資本金への関係についても説明しましょうか?」

まるで、私が次に用意している質問を知っているかのような自信。

偉そうに言っているわけではないけれど、私の反応を楽しみにしているような余裕すら感じられた。

「資本金か……。正確に説明できそうだから、私にではなく同期のみんなに、説明してくれる?」

ほんの少しの悔しさと意地悪な気持ち。

それがないとは言わないけれど、単純に、彼がどんな反応を示して、どんな説明をしてくれるのかが見たくなって。

檀上から降りた私は、都築くんを手招きして前に呼んだ。

「都築くんが説明できる範囲でいいから、資本金について説明してくれる?
総務部と聞くと、社内の細かい雑用を処理している部署だってイメージがあるかもしれないけれど、わが社が発行している株式や転換社債、そして株主対応。
対外的にも大切な業務も多くしているから。
資本金については、総務部に関係なくても、自分の勤務している会社の基本的な知識だから、ちゃんと知っておいてね」

少し騒がしくなった新人さん達にそう告げた後、前に立った都築くんに笑顔を向けて頷いた。

そして。

「資本金と転換社債の関係ですが、……」

滑らかな言葉と落ち着いた表情で、都築くんの説明が始まった。

そして、予想以上の展開に驚いた。

この男、何者?

正確な言葉をつなげる様子は、新人とは思えないほどだった。