「相模さんのような設計ができるようになるまで、まだまだしごかれそうだから、頑張らなきゃな」

「そうだね……。司なら大丈夫だよ、いつかは相模さんの後継者って評判を超えて、司自身を目標にされてしまう建築士になれるよ」

「んー。そうなれればいいけどな。あの相模さんを超えるなんてかなり大変そうだけど、真珠を幸せにするためにも、頑張るか」

な。と大きく笑う司からは、それが彼にとっての至上命題だとでもいうような大きな決意も感じられる。

司が、私を大切に、幸せにしようと心に決めて、何もかもを私のためだけに進めていく言葉の羅列。

心が寄り添ってから何度も触れたそんな言葉たちに、その都度ときめいて、今まで我慢していた感情の大きな波を感じながら。

あー幸せだな、としみじみ思う。

今まで重なる事がなかった司との距離。

心と体全てが司と一緒にいられるようになって、私自身が解放されて司の愛情を素直に受け止められるようになりつつある。

「真珠が望む生活全て、叶えてやりたいからな。目指せ相模恭汰だ。
真珠が側にいてくれればそれが現実になりそうな気がするから不思議だな」

独り言なのかどうか。

握りこぶしを作りながら呟く司の幸せそうな顔は、今の私には複雑に響いてしまう。

仕事の事や、相模さんへの熱い憧れの気持ちを語る司を目の前にする度に、私を愛してくれる司の気持ちに甘えて目をそらしてはいけない現実を思い知らされるような。

切ない感情が私の心をざわつかせて仕方ない。

「司がいい仕事ができるように、私も協力しなきゃね」

そう思う気持ちに嘘はなくて、司の為に私にできる事を細々と続けたいと思うけれど。

「でも、ちゃんといい奥さんになれるのかな……」

司に聞こえているのかいないのかの小さな声は、不安しか感じられないものだった。