「俺の人生なら、真珠が側にいて作ってくれ。
建築の仕事は楽しいし、これからも続けていくつもりではいるけど、何もかも真珠が俺を認めて愛してくれる事が前提なんだ。
仕事も趣味も、どこででも、どんな方法ででもできる。
でも、真珠が俺の側にいるためにできる事には限りがある。
真珠の気持ちのうつろいに敏感になって、愛情を強化したり、真珠が喜びに満ちている時には隣でそっと見守りたい。
悲しい時にはその気持ちを俺が掬い上げてやる。
その為に真珠の側にいるし、その為だけに俺は生きていく。
そうする事で、俺の人生は作られていくんだ。
結局、真珠ありきの俺だ。
せいぜい覚悟して、俺の存在に慣れてくれ」
懇願とも聞こえる司の声が、私の心に注がれて。
もう逃げられない、と感じた。
あまりにも重い司の気持ちに戸惑って、ある意味逃げ出しそうにもなっていた私の体にダイレクトに届いた感情。
決して口先だけではない、私と恋人同士になったという浮足立つ気持ちからだけではない覚悟も込められた言葉に、いよいよ私は拘束された。
愛しい人から、ここまでの強い気持ちを込められた言葉を落とされて、それを拒むなんてできるわけがない。
私はもう、陥落だ。
気持ちを固めるように大きく息を吐いて。
「ちゃんと女王様についてきてね」
零れ落ちる涙も構わず、覚悟の言葉は上から目線でささやいた。
どんな時でも私は私だ。
そして
「私の人生も、司が側にいて作って……」
言いかけた言葉が終わるのを待てないように一段と強くなった司の腕の力に、私全てが溺れた。