それまでお弁当を食べる手は休めずにぽつぽつと呟いていた司だけど、その言葉と共に箸を置いた。
ふっと視線を私に合わせると、笑っているのか泣いているのかわからない表情を浮かべて。
「今までは、真珠が俺のもんじゃなかったから見過ごせていた不安も、もう耐えられない。自分が手に入れた大切なものを手放さないために毎日動いてるんだ。……真珠が俺の側にいるっていう現実だけのために生きてる」
射抜くかのような強い力。
言葉に込められた思いが私に注がれる。
「真珠が海くんに守られて生きていた事は、今でもやっぱり俺には大きな不安材料だし、それはきっと一生続くんだ」
「だから、海とはなんでもないのに……」
「わかってる。海くんとは結局結ばれる事のない縁だったっていうのはわかってるけど、それだけじゃない、真珠が俺の目の届かない所で過ごす時間全てが俺には不安なんだ」
「司……」
「こうして二人きりで過ごしている時間だけが、不安から解放される唯一の時で、真珠が俺と離れて過ごす時間全てが不安で仕方がない。情けないだろ」
司は肩を落として小さく息を吐くと、ゆっくりと立ち上がって私の隣に腰を下ろした。
そして、私の肩を抱き寄せ、顔を私の首筋に埋める司の体は少し硬直しているようだ。
「真珠が俺の側にいないと、もうだめなんだ。
俺が生きるのは、ただ真珠を愛するためだけで、他には何の目的もない。
真珠を愛して愛されて、それがベースになって仕事もできるし生活ができる」
抑揚のない声と共に注がれる重く激しい司の感情が私の体を震わせた。