気が付けば、塾の前に立っていた。
ケータイを取りだし、時計を確認する。
まだ、講習が始まるまで10分はある。
「ぼーっとしてたい気分」
そう言いたがら、扉の横にもたれ掛かった。
その瞬間、勢いよく扉が開いて
少ししてから、ひょこっと顔を出したのは
ふうまくんだった。
予想もしない人物に
あたしは動揺を隠せない。
思いっきり目があった。
マンガとかでよくあるワンシーンみたいに
バチって音がなるくらいに勢いよく。
気まずい空気の中。
「そこで何してるの?」
沈黙を破ったのはふうまくんの方だった。
「やっ、こ、講習まで時間があったんで!」
「早く来るのはえらいけど、外は危ないから中入ってなよ」
うれしかった。ふうまくんに心配されるとか
思ってもみなかったし。
たとえ、それが特別じゃなくても、十分だよ。
「はい!って言いたいんですけど、今たそがれたい気分なんです」
「はい?」
「えーっと、何て言えばいんだろ。い、今は勉強から離れたいんです」
「そっ!じゃ、俺も一緒にたそがれていい?」
あたしの返事も聞かずに
ふうまくんは、あたしの隣に立った。
立ったかと思うと
次は座って、上目遣いで
あたしを手招きした。
あたしも同じように横に座った。
また、沈黙が流れる。
何でだろう?
いつも、沈黙になると気まずいって思うのに
ふうまくんとの沈黙は
落ち着いちゃう。
「見てよ、このテストの点数」
ふいに、顔の前に突きつけなれた一枚のプリント。
よく見ると、国語のテストらしき、その紙の右上には
赤い文字で38点と書かれている。
38、38。
「38点!?これ、ふうまくんのテストですか!?」
今のすごく頭のいいふうまくんがとったとは思えない数字に驚く。
「うん。ちょうど、まゆちゃんくらいの時かな?昔から国語だけは苦手でさ。でも、初めてこんな点数とって悔しくて。次は、絶対とらない!って勉強しまくったら、今じゃ得意科目だよ」
ふうまくんは、そう言いながら微笑んだ。
「だからさ、俺は勉強から離れる時間もあっていいと思う。でも、講習の時間くらいは勉強しっかりやれよ!」
あたしの頭をポンポンたたいてから
ふうまくんは塾に入って行った。
「あたし、頑張んなきゃね」