「もうすぐここの花壇、なくなっちゃうの」

「えっ……?」

「花壇なくして、代わりにベンチ置くんだって。ここで昼食を取る生徒が多いから」

昨日初めて校舎裏に来た俺は、そんなこと知らなかった。


「じゃあ、昨日からここ俺の場所になっちまったから、もう誰も来ないんじゃね?」

「そうだね……、確かに昨日、春樹が来てから誰も来なかった」

「やっぱり」

俺、悪いことをしたんだろうけど、それは彼女にとっては嬉しいことなんじゃないんだろうか。


「誰も来ないなら、ベンチ必要ねえじゃん」

「必要だよ。だって春樹、人見知り直すんでしょ?」

「あっ……」

そうだった。


「人見知りが直ったら、春樹を怖いと思う人はいなくなる。そしたら、ここへまた生徒がやってくる」

そうだけど……。

でもそしたら、彼女は、花壇に植えられている花はどうなる?